つかまえたよ。



xxx 鬼ごっこ



初めて掴んだうでは吃驚する程細くて、鳴海は呆然と二の句を紡げずにいた。
「………」
「…… ?」
「………」
「…… 所長」
「………」
「所長。起きてらっしゃいますか」
怪訝を通り越して、呆れすらも感じさせる口調でライドウは下から見上げる。ハッと幾度か瞬きして鳴海はまじまじとライドウを見詰めた。
「所長?」
「やー…、ちょっと吃驚しちゃってねえ」
大きく息を吐くと、掴んだ手首から手を離し、今度は両手で其の両手を繋いだ。両手で握手をするような滑稽な状態に、ライドウは眉を顰めた。
何処からどう突っ込めばよいやら見当すらもつかない。
「ライドウ、こんなに細いのによく闘って来れてるなあって思ってさ」
「―――――」
キッ。と瞬時にしてライドウの眉が釣り上がる。
「馬鹿にするつもりならば…」
くん、と瞬間的に繋いだ手にちからが込められたのが判って、鳴海も無意識に身体が動いた。
込められたちからは僅かなりとも、外された手は驚く程綺麗に流れる動作で次の行動に入った。
しかし鳴海は更に其の上を見越して身体をずらすとライドウの喉元に手を宛がうと同時に、ライドウもほぼ同じ姿勢で鳴海の首元に手刀を当て、相対して構える。



「――――――――――」



ほう、と息をついたのは、同時。
だが構えを解いたのは鳴海が先だった。其れを形容し難い表情で見ながら構えを解いたライドウは、小さく息を吐いた。
「矢張り侮れない方ですね… 貴方は」
掠れた台詞に、鳴海がいつものひとをくったような笑顔を浮かべた。
「伊達に君より年喰っちゃいないんでねー… 此れでも?」
其の視線を避けて俯いたライドウは、
「何が云いたいのですか…」
と問う。
其の言葉に鳴海は一瞬笑顔をなくし、しかし次には深い深い笑みを浮かべてライドウの耳元に口を寄せた。びく。と反応を示すがライドウは動かず、鳴海の返答を待つ。



「こんな俺でも、君を捕まえることが出来るんだよ」



「……… ?」
云いたいことの意味を掴み取れず、ライドウは無言で再び眉を寄せた。
「判らなくて、いいんだよ」
「所長?」



「もう、捕まえられるって、俺が判ってるから」



其の笑顔が余りにも無邪気で、だが其れでいて含みある毒を感じ取って、ライドウはただ鳴海を見詰めた。



つかまえたよ。

もう 逃がさないよ?



――――――――――――――――――――――――――――――





逃 げ て !
爽やかに見せつつ、実はビックリ腹黒い鳴海です!
14代目が毒牙に掛かる日も近いです!(ヲイヲイ)

20060327