依存愛五題 お借りしました → リライト *どこにもいかないよ(いけないよ) いやだいやだいやだ。 おねがい いかないで。 そばにいて。 なんだかすごく くるしいんだ。 そのやさしいてで ぼくをいやして。 こころのなかでだだっこのようにさけんでいるのがわかる。 そんなこと くちがさけたっていえやしないのもわかってる。 そんなこと いえるたちばじゃないっていうのもわかってる。 でも いいたい。 いいたいのに いえない。 おねがい いかないで ください。 「仕方がないなあ、ライドウは」 いつもの優しい笑顔で微笑んで、鳴海はライドウを抱き締めた。 唖然として動けなくなっているライドウに、鳴海はただただ笑っているだけ。 「判ってないとでも思ってるの?」 「ん?」と呆気に取られたままのライドウを覗き込んで、また、笑う。 「君の言葉は、俺には伝わってるんだよ。 大丈夫だよ此処に居るからね。 どこにも いかないよ」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 俺だって 同じ気持ちなんだから。 *頼むから逃げないでって、そんな風に泣かないで 不器用な君にはいつも何かが足りない。 其れは言葉だったり行動だったり気持ちだったりする。 少し注意していれば判ると云うことに、最近ようやく鳴海は気づいた。 痛いくらいの 叫び。 きっと君は今までずっとそんな風にして泣いてきたんだね。 無関心が1番の 攻撃する刃。 「大丈夫だよ此処に居るからね」 だからそんな風に泣かないで。 頼むから逃げないでって、そんな風に泣かないで。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― (*どこにもいかないよ)の対ってカンジで。 *君の熱が足りない 求めれば求める程に、次に再び襲ってくる欲望の度合いは増すばかりで、一体自分はどれだけ貪欲ないきものなんだろうかと疑問に思う時がある。 ぜんぜん 足りないんだ。 もっともっと欲しい。 いつか君が壊れてしまう程に飽きることなく溢れ出る欲望。 嗚呼君の熱が足りないよ。 枯渇したこころに 君を満たしたい。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 飽くなき欲求が君を破壊するだろう、きっと。 *どうしてこんな痛み僕に教えたんだ 最初は不快感。 今まで感じたことのない言葉や行動や想いが自分を戸惑わせるばかりで、自分はただ其れを受け止めることだけに必死で、其の次にくる波のことなんて予想だにしなかった。 だんだん不快感は薄れてゆき、不思議に感じることなく訪れる安堵感。 そして 痛み。 普段何でもない行動のひとつひとつが、言葉のひとつひとつが、こんなにも痛く胸に突き刺さって感じるなんて、どうかしてる。 其れなのに貴方はただそんな自分を見ては嬉しそうに微笑むばかりで。 嗚呼、本当に、どうしたらいい。 苛立ちにも似た焦燥感が自分を責め苛む。 どうしてこんな痛み 僕に教えたんです。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― これぞ鳴海の思うツボ。 *肩を寄せ合い夜明けを待とう 夜明けの空を見たことがないって、君が云った。 暗闇に閉ざされた世界が徐々に白んでくる、世にも美しい光景を見たことがないなんて勿体ない。 時計の秒針をじっと睨んで、12時が過ぎたから日が変わったなんて云うのとは断然違う。あの気持ち、高揚感。 「本当は年越しに見るのが有難みも何もかもが違うんだけどねえ」 外套を着込んで鳴海が呟く。 ライドウは、無言で空を見上げている。吐く息が、何となく白く感じる。 まだ暖かい季節とは云えない今の時期、太陽の昇る前の時間帯は何処か冷えた感じがしている。 空気が澄んでいるとでも云うのだろうか。 「でも君と見れて嬉しい」 「まだ見れてませんが」 「話のハナをぽっきり折るねえ」 苦笑する鳴海に、ライドウは肩を竦めた。そして小さく身震いする。 其れを見た鳴海が細いライドウの肩を抱いて引き寄せた。 「……… なにするんです」 「寒いんでしょ? どうせ誰も居ないよ、まだ皆寝てる時間だ」 にこにこと笑う鳴海に、ライドウがひとつ溜息を落とす。 しかし抗おうとはしなかった。 ちょっと、狙いすぎたかな? 鳴海は胸中で呟いた。 でも、ライドウと夜明けを見たかったのは本心だ。 一日の、もっとも美しい瞬間を、美しい君と見る。 最高の始まりじゃないか。 満足そうに鳴海は微笑み続けながら、徐々に色彩を変え始めた空を見上げた。 さあ君と肩を寄せ合い夜明けを待とう。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― きっと今日はいい日だよ。 20070529 戻 |