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危うく 存在する それは。 xxx えいえんのしろ。 自分の一歩先を不安定な動きで歩く、その柔らかい髪を見詰める。 彼は先程からずっと他愛のない内容の話を続けている。端々に知らなかったことが含まれていて、黒木は感心する。 須田の知識は多岐に亘って豊富だ。 それを厭味なく話す。 ただ話すことが好きなのもあるだろう。それは酷く心地よく黒木に新しいことを吹き込んでいく。 元来口数の少ない黒木は、恐らく会話の相手としてはあまりいいとは云えないかも知れない。だが須田はそんなことはもうとっくに判っていて、僅かな反応をしっかり理解してくれている。 事件の現場でもそれは発揮される。むしろそれが須田の本領だ。 あの非日常に取り込まれた緊張と不安と恐怖が綯い交ぜになった異質な空間で、須田は真っ白なまま、感じるままに僅かな「本来の事柄」を本能的に感じ取ることが出来ている。 「須田チョウは」 「ん?」 「須田チョウは、真っ白ですね」 思ったままをくちに出してしまってから黒木はうろたえた。 意味が判らなさ過ぎる。 案の定須田もぽかん・とした表情をしていたが、次の瞬間には表情を崩した。 「なんだい、それ?」 「いえ、その… いつも思うのです。事件現場での須田チョウはひどく澄んでいる。澄んで… クリアだからこそ、感じ取れる何かがあって… それが自分には須田チョウが真っ白だからだと、そう思ったんです」 我ながら幼稚な意見だと思った。 くちにしながら、黒木は焦る。バカなことを口走った。 「すいません、気にしないでください」 俯く黒木に、小さく笑った須田の声が聞こえた。 「そっかぁ… 黒木にはそう見えてるんだね」 その声は決して自分をバカにする響きはなく、黒木は再び須田を見詰めた。須田は視線を戻してくれた黒木に微笑む。 「俺は真っ白なんかじゃないよ」 「須田チョウ」 「うん、確かに現場には余計な先入観とか私情は出来るだけ持ち込まないようにはしてるし、残されたものを感じようとする。でも、それは真っ白とは違うんだ」 必要な情報とか、持ち込むことあるしね。と須田は冗談ぽく云う。 「俺は真っ白なんかじゃないよ」 同じことを繰り返す須田は澄んだ眼をしている。 にこにこと微笑むその姿はこんなにも穢れなく見えるのに? 黒木は言葉を詰まらせた。 「多分そう見えるのは、無理矢理に白を乗せてるからだろうね」 「――――――――――」 「どんな度合いであれ、意味合いであれ、真っ白なんて多分、ないと思う。その上に白を塗って、そう見せてるだけなんだ。黒木は多分そうしてる俺が白に見えたんじゃない?」 そう云って、いつもとは違う遠い眼をする須田は何故か夢をみているようだった。 「でも、」 ようやく黒木は言葉を発した。それは自分でも吃驚するほどに掠れていたが、須田にはちゃんと届いていたようだった。 「でも、俺にはそれは永遠の白のように見えるんです」 須田が眼を丸くする。 幼くも見えるその表情は矢張り穢れないもののように見えて、黒木は自分の意見に間違いはないと思った。 須田は一瞬どうしたらいいのか言葉を失ったようだったが、僅かに彷徨わせた視線を再び黒木へと戻すと、ぎこちなく笑った。 「俺には黒木こそ真っ白に見えるな」 「そうですか?」 「うん」 「よく… 判りません」 「うん。それでいいと思うよ。多分これは、俺達が互いにしか知り得ない白だよ」 微笑む須田の言葉に眼を見張る。 「お互いが居る限り存在する、永遠の白だよ」 先刻の黒木の言葉を引用して微笑む須田に、黒木は泣きそうな気持ちになった。 嗚呼 なんて美しい 白 ―――――――――― 一歩間違うと穢すことすらも有得る白を、黒木は手にしていると気がついた。 ―――――――――――――――――――――――――――――― *黒須になりきれていない、黒(恐らく無自覚にある→)+須みたいなかんじ。 底辺になんだかヤンデレっぽさがある黒木です。綺麗なものを無性に穢したくなる気持ち。大事に、大切にしているものをたまに壊したくなる、不気味な衝動。そういうのを、片想いのとき抱いてるみたいなイメージ。 「矛盾する」と云うことが最高のスパイスです。 そして黒木って奥底にそういう黒さがあると非常に萌えるキャラですよね(すべてが台無しになる言葉だな…!) タイトルは『女神異聞録ペルソナ』の奇跡特殊魔法から。 これと対になっている『ふめつのくろ(不滅の黒)』がすごく好きでした。@tlusのネーミングセンスは最高。 2010.05.23 戻 |