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想いとは、伝染するものなのだろうか。 xxx Ogni pensiero vola 不意に。 顔を上げる。 眼が合う。 不意に。 振り返る。 眼が合う。 「最近気がつくと黒木と眼が合うよねえ」 暑い日の 昼。 気を抜くと残暑らしからぬ暑さに意識を持っていかれそうになる中で、必死に地に足をつけての捜査の途中での 昼。 誰もがほっとする気温に整えられたファーストフード店の一角で、暑さに大分やられた風な須田が熱に浮かされた茫洋とした表情で呟く。視線は何処か定まっていない。しかしだからと云って彼の意識までそうなっている訳ではない。 「… そうですか?」 手にしているドリンクの紙コップは温度差によって結露していて、それがじっとりと染み込んできて、気持ちが悪い。 「うん」 短く答えて、須田はドリンクをくちにする。 ふ、と吐き出された息はどれだけの熱を今、排出したのだろうか? 「… 偶然では?」 平坦な答えに須田は気分を害するでもなく、「そうなのかもね」と頷いた。 「別にそう思っただけで、黒木がそう思ってないならそれでいいんだ。俺が感じただけだし」 騒々。 騒々。 昼時のこの場所は時間帯や外気温のせいもあってか、いやに騒々しい。 しかしそれでも須田の声だけは酷くクリアに黒木の耳に届いていた。 嗚呼。 本当はずっと見ていた。 黒木は僅かに視線を落として須田の眼から逃れた。 ずっとずっと見ていた。 だが最近になって、その視線が合わさることが増えた。 最初は偶然だと思って、それを会釈することで流した。しかし見る度に視線は重なり、その度に黒木は視界をぼかすようになった。世界に彼を捉えていても、それは幻のようになっていた。 騒々。 騒々。 喧騒と、未だ抜けきらぬ熱、そして彼への欲求が重なり合って、どうにかなってしまいそうだ。 ぎり。 と噛み締められた奥歯が小さく鈍い音を立てる。 「… 偶然じゃない筈なのになあ」 呟かれた言葉はあまりにも小さくて。 しかし誰よりもクリアに耳に響く須田の声は、今回も黒木の耳へと届いていた。 視線を戻す。 眼が合う。 須田は眼を丸くして黒木を見た。「ん?」と首を傾げる須田は、黒木が自分の言葉を聞き取っていたとは思ってないようだった。 嗚呼。 気づかれていた? この視線に(この視線にだけ) おそらくそれ以上のことは伝わってはいないようだった。しかしいつ伝わってしまうか判らない。 この想いは 悉く 飛んでいく。 飛んで 彼に 伝わっていく。 ―――――――――――――――――――――――――――――― *まずタイトルありきでうまれた黒→(←?)須です。 他人の感情に敏感そうな須田。のイメージ、そして黒木の感情は駄々漏れ。のイメージ(苦笑) そういうイメージがタイトルの『Ogni pensiero vola』と直結した、本当にイメージだけの小話。 飛び散った散文も、イメージ… のつもり(苦笑) ちなみに『Ogni pensiero vola』とはイタリア語で『想いは 悉く 飛ぶ』。何年も前に知った言葉ですが、妙に頭に残って仕方のなかった言葉です。一体何で知ったのかは… 忘れました(苦笑) 2010.09.05 戻 |