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誰かが呼ぶ声で 眼が覚めた xxx VOiCE 「どうしたの黒木…」 半分眠りに落ちたままの須田の掠れた声に、黒木はどうしてそれほど・と思えるくらいに反応して振り返った。 連日の忙しさで、須田は最近の眠りは驚くほど深いと自分でも思っていたのに、何故か今夜は不意に眼が覚めた。 呼ばれた気がした。 沈澱した意識の底にまで僅かに響いた声は、誰のものかは明瞭としなかったが、それでも意識の覚醒は促された。だが芯まで眠りに落ちていた意識はそれほど起ききってはおらず、瞼は重く、発した声は掠れて弱々しくあったが、静かな部屋にそれは響いた。 眼が覚めて、まず認めたのは窓のカーテンの隙間から差し込む灯。 そして隣に寝ている筈の男の起きている気配。 この寒い季節だというのに、黒木は冷えた空間に身を起こしていた。 ぼんやりと浮かぶその姿は、姿勢こそ真直ぐでカーテンの隙間から外を眺めているようだった。しかし、どうしてかその背中は弱々しく寂しそうでもあった。 振り向いた黒木は、逆光で表情が判りにくかったが、それでも困惑した雰囲気だけは感じ取れた。窓へと向いていた身体を須田へと向き直り、ようやく暗闇に慣れた眼が、微苦笑を浮かべている彼の顔を捉えた。 「起こして… しまいましたか?」 「ううん、…」 まだ茫洋としたままの意識で須田は黒木に答える。 「大丈夫… だけど、ねえ、俺のこと、呼んだ…?」 「え?」 こちらを見る黒木は何故か吃驚した表情で、須田は、嗚呼、勘違いか・と思う。 「夢、だったのかな…」 「……………」 「でも、誰かが呼んでたんだ…」 疲れた身体が再び睡魔を引き起こし、だんだんと重くなる瞼に抗いながら、須田はゆっくりと言葉を紡ぐ。 「俺じゃなかったのかも、知れないけど… すごく、哀しい声だったから」 その言葉に、黒木が僅かに眼を見張る。 しかしそれに気づくことなく、須田は枕元に置かれた黒木の手に己の手を重ねる。黒木の手は氷にように冷えて強張り、須田の手は温かく柔らかい。 ねえ こんなになるまで眠れなかったの? 襲い掛かる睡魔に引き摺られながら、須田は何とかして再びくちを開いた。眠りに落ちる前に、これだけは云っておきたかった。例え自分の勘違いであっても。 「俺は此処にいるから…」 (独りじゃないよ) (大丈夫だよ) だから安心して おやすみ 最後は言葉になっていなかった。 そうして眠りの底に落ちた須田を黒木はただ見詰め、そのままシーツごと彼を抱き締める。柔らかく温かいその身体は、酷く黒木を安心させ、先刻までの冷えて固まった心を溶かしていくようだった。 黒木はくちに出して須田を呼んではいない。 しかしその声は確かに届いていた。 ―――――――――――――――――――――――――――――― *こういう淡々とした触れ合いが黒須にはよく合う。 黒木って無口な分、すごい胸中が気になるキャラだと思います。 黒須な自分にとっては、ほんと須田チョウに対してどう感じ、想っているのかとか気になって仕方ない。『待機寮』で垣間見せた信頼と云うか執着と云うか、そういうのを原作でもっと見てみたいです…! 須田チョウは他人の感情の機微にすごく敏感だと思うので、きっといろいろ通じてると思う訳ですよ! 2010.12.31 戻 |