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想い隠し切れない5題 (ほんとうのきもちは、どこにあった?) 1.震えた声 (せいいっぱいの虚勢) 黒→須(原作) 「須田チョウ」 聞き慣れた、いつもの調子と違う声。自分を呼ぶ、彼の声が、やけに頼りなく思えた。 不意に抱き締められて、混乱した頭はただ彼を拒否しようとした。おかしい。 おかしい。おかしい。おかしい。どうしてこんなことするんだろう。彼の気持ちが全然判らなくて、どうしたらいいのか判らなくて、更に混乱する。 「須田チョウ、」 消え入りそうな声。 いつもの冷静で落ち着いた声とは全然違う、震えた声。 「須田チョウ、お願い、ですから、」 俺を拒まないで 掠れた声で囁かれて、その言葉に驚いて、須田は硬直した。 痛いくらいの感情は、己にも彼にも持て余す程に強大なものになってしまっていると気づく。 「黒木」 そして彼を呼ぶ自分の声すらも 震えて い た。 ―――――――――――――――――――――――――――――― 2.乱れた吐息 (急がずにはいられなくて) 黒←須(原作) 黒木が 撃たれた。 多分刑事になってから1、2を争う程血の気が引いた事件だったと思う。 思えばかなりの数の事件を手掛けてはきたけれども、誰かが酷い怪我をするなんていうことは、幸いなことに滅多になかったと云っていい。強行犯係という場所に身を置いていながら、それは本当に僥倖だった。 だからこそ、今回のことは、血の気が引いた。 駆けつけた病院で見た彼の顔は青ざめていて、知らず震えてしまった。乱れた息でただそれを見詰めることしか出来なかった自分は滑稽なくらい動揺していたのだと思う。チョウさんと容態の説明を聞いている間も何だか宙を漂っているんじゃないかと思えるくらい意識はふわふわとしていた。 その状態から覚醒したのは、黒木の意識が戻った時だった。 麻酔が効いていて、いつもよりぼんやりしながらも自分達を見てくれたことに酷く安堵した。 数日後。 ようやくその日の仕事を片付けて、駆け足で黒木の病室に向かう。面会の終了時刻が迫っていた。扉を開けると班のメンバーがいっせいにこちらを向いた。嗚呼何だ、皆来てたんだ。 まだ整わない息で、黒木の許に行く。 「ぎりぎりに、なっちゃった」 我ながらみっともない顔をしていると思う。こんな時間ぎりぎりに来たせいで、随分走って息も絶え絶えだ。しかし病院着をまとった黒木は怪我も良くなったのか、平素と変わらぬほどの落ち着いた表情で、だが息を切らしてまでも駆け込んだ須田に、小さく微笑んだ。 「わざわざ有難う御座居ます、須田チョウ」 嗚呼、こんな顔が見たくて自分はこんなに急いだのかな。 ぼんやりと須田は、そう思った。 ―――――――――――――――――――――――――――――― 3.揺れる瞳 (気にしてない、ふり) 黒→須(ドラマ) 隔離部屋へ移動しました。 ―――――――――――――――――――――――――――――― 4.冷たい指先 (ほんとうはずっと待ってた) 黒(→?)須(原作) とある事件での聞き込み。ようやく得られた証言者は頑固かつ横暴な態度で須田と黒木を撹乱した。それを須田は時間を掛けて宥めすかし、相手の機嫌を取る。恐らく他の捜査員だとほぼ最初の時点で完璧に持て余していたと思われるのに、須田はいちいちゆっくりと対処した。 その甲斐あってか、ようやく折れた態度を見せた証言者だったが、どうも黒木が気に入らないらしく、彼の退室を求めた。 小さなプレハブの場所で、退室はイコール外に出ることを意味し、初冬である今の季節にそれは酷な指示だった。 流石にそれには拒否を示しかけた須田を遮り、黒木はさっさと外に出る。 相手の対応にすら満足に出来なかった自分に、其処で居場所はないと思ったのだ。そしてそうすることで重要な証言が得られるものならば寒さなど全然酷ではなかった。 「じゃあ黒木、近くに喫茶店があったろ、其処にいてくれよ」 出る間際、須田がそう耳打ちする。 しかし黒木は外に出ると、扉の横に移動して立ち続けた。 多分証言を得るまで、また時間が掛かるだろう。 だが黒木はその場を動くことはなかった。 随分時間が経った。時計は見なかった。中から「御協力感謝します」と云う須田の声が聞こえた。小さく音を立てて扉が開き、須田が出て来る。小さく会釈しながら扉を閉め、そしてハッと黒木に気づいて大きく目を見張った。 「黒木、なんで…!」 「いえ、今つい先刻戻って来たんですよ。長かったですね」 素知らぬ振りをする黒木に、須田が真意を探ろうと見上げてくる。 だがそう簡単に見破られるつもりもない。 「次はどうしましょうか」 何かを問われる前に、黒木がくちを開いた。こういう時、自分の抜け目のなさに自嘲する。 須田は一瞬どうしようかと躊躇った様子だったが、不意に視線を落として僅かに眉を顰め、それから小さく溜息をついた。 「そうだな…。流石に俺もちょっと疲れたよ。近くにもう一軒喫茶店があったね、其処で打ち合わせがてら休憩しようか」 「… はい」 見破られている。 多分先刻須田は見たのだ。寒さで血の気の引いた、冷たい指先を。 嗚呼せめてポケットにでも手を入れておくべきだった。 ―――――――――――――――――――――――――――――― 5.かみ締めた唇 (涙は見せないよ) 黒→須(ドラマ) 隔離部屋へ移動しました。 ―――――――――――――――――――――――――――――― *黒木と須田 矢印方向入り乱れ、小話5編。 ちょっと調子こいて原作・ドラマ、かつ矢印方向入り乱れでお送りしました。 ついでに云えば×はないです。片思い的お題なので。 そうしたら切なさ乱れ撃ちな状況にしかならなかったです。 こちらから、お借りしました。 …確かに恋だった 2009.07.26 戻 |