キス10題 後半5題  (KISS KISS KISS)




6. 特別な儀式(黒木×須田)



「じゃ、明日は俺、そのまま帳場に向かうよ。悪いけど黒木はあの事件を引き続き頼むね」
立てられた帳場の準備と、班での打ち合わせを済ませて寮に戻り、部屋前で軽く挨拶を交わす。
「はい」
「じゃ、おやす…っ」
ドアノブに手を掛けたところで不意に黒木が須田の肩を掴んで身体を部屋に押し込むようにちからを込めた。咄嗟のことにそのまま倒れかけた須田の身体を支えるように滑らかな動きで黒木も部屋に滑り込む。
目を白黒させて言葉を紡げずにいる須田の視界の隅で扉が閉まる。その視界も黒い影で閉ざされ、唖然としたまま薄く開いた須田のくちびるを、黒木のそれが覆う。
「―――――― な、」
驚いて更に開かれたくちびるを割って、ぬるりと舌が侵入して無意識に須田の身体が震える。不安定な体勢のままちからが抜けてしまった須田は思わず黒木にしがみついた。角度を変えて続くキスに意識が遠のきそうになる。漏れる音だけが意識を引き止めた。

ようやく黒木が須田を解放すると、須田はずるずると座り込んだ。
「な、なんだよ、いきなり…っ」
突然すぎて呼吸することすらもうまく出来ずに酸素が足りない。荒く息をする須田に、黒木が苦笑した。座る須田に合わせて膝をつき、ぎゅっと抱き締める。
「すいません… しばらく貴方に触れられないかと思うと、我慢出来なくて」
「え、」
「本当は抱きたいんですけど、加減出来ない自信しかないんです」
「ちょっと、黒木」
「だから代わりにもう少しキスしたいんです。いいですか?」
再び唖然とした須田の許可を得る前に、更に黒木は深くくちづけた。

(擦れ違う分、貴方に俺を、俺に貴方を刷り込ませたい)



まるで特別な儀式のように繰り返されるくちづけに、須田はだんだんと翻弄されるしかなかった。



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7. 言葉の代わりに(黒×須)



言葉だけでは不安になりがちな自分に、黒木はひたすらに行動をもって須田に気持ちを伝えてくる。いつもそうだ。いつもいつも。
だけどいつまでもそんな真面目で優しい彼に甘えてばかりいると、また違う不安が生まれてきてしまう自分に、正直焦る。こんな受身ばかりの態度でいいのだろうか。彼の想いに応えるだけではなく、応え返すこと。与えられる気持ちに、同じだけの気持ちを。
でも、どうしたら?
今までこちらから出たことがないだけに、どうしたらいいのか判らなくなって、また迷って悩む。
ぐるぐると葛藤するだけでは答えは出ない。
嗚呼もう。
「どうしたんですか」
寮の部屋で座り込む須田を真正面から見据えて、黒木が問うた。折角一緒に居ると云うのに、唯ひとりでぐるぐるし始めた須田に気づいたのだろう。僅かに眉間に皺が寄っている。
言葉に詰まる。
何とか言葉に出来ないものかと逡巡するが、結局上手くいかない。ただ申し訳なくなって彼を見上げることしか出来なかった。
そんな葛藤する須田の雰囲気が伝わったのか、黒木はひとつ小さく溜息をつき、腕を回して緩やかに抱き締める。
「また何か考えてるんですね。云えるときに、云ってくれれば、いいですよ」
優しい彼はそうやって自分を甘やかす。
嬉しくて哀しくて、須田は言葉の代わりに、思うより早く行動に出た。



初めて自分から触れた彼のくちびるは、とてもあたたかなものだった。



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8. やわらかい唇(黒×須)



「いっ …てぇ」
不意に上がった悲鳴に振り返る。口元に手をやって眉を顰める須田に、どうしたのかと無言で黒木がいぶかしんだ。須田は苦笑を浮かべてみせる。
「ごめん、くちびるが切れた」
此処最近冷えて乾燥し始めたせいだろうか。妙にかさかさしていた気はしていたが、切れるまでになるとは予想していなかった。女性みたいにリップなどを持ち歩く男などそうそう居る訳でもなく、結局放置した結果切れてしまったらしい。
これが地味に痛い。
「大丈夫ですか?」
「んー、うん。ちょっと染みる程度だ、大丈夫」
ぺろ、と舌で舐めてみる。途端にじわりと広がる痛みに再び眉を顰める。
「なんかくちびるって柔らかいからこうやってみてもなんかうまく傷口舐めてるカンジしないなあ。普段気にしてないけど、こうなるとちょっと気になって仕方ない。なあ黒木ってこんなこと、あ…」
言葉が途切れた。
くちびるに、生暖かく湿った感触がして、また痛みが広がる。

これは、キス じゃ ない よ な 。

混乱した頭が珍妙なツッコミを入れる。確かにくちびる同士は触れ合っていない。黒木は、須田のくちびるを舐めているだけだ。いや、だけというけれども普段は滅多にしない行動に、須田は混乱して硬直した。呆然とする須田に追い討ちを掛けるように、更に黒木は執拗に傷口を舐める。
「っ、 い… っつぅ」
遠慮のないその動きに、痛みは倍増した。思わず目蓋を閉じた須田を見て、黒木はいきなり咥内に舌を差し込んで深くくちづけた。
「んっ …んう!」
柔らかくて敏感な場所の傷が更に痛む。しかし同時に咥内を深く犯されて生まれた快感が合わさり、云い知れぬ気持ちになる。

どれ程続けられたのか、ようやく須田が開放された時、息はすっかり上がり、痛みなのか快感なのかすらも判らなくなっていた。

「な、なにするんだよ、い、いきなり…!」
「いえ、痛がっていたんで」
いやいやいや。むしろ今の方が痛かった。絶対痛かった。
しかしツッコミを入れる前に黒木が続けて云う。
「それに」
「?」
「くちびるは柔らかい方がいいですよ」
「な、なんで」
何となく厭な予感がしたが、つい聞いてしまう。


「だってその方が気持ちいいキス、出来るでしょう」


聞いて呆気に取られる須田に小さく笑うと、黒木は再びくちづけた。



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9. キスだけじゃ足りない(黒×須)



(特別な儀式から連結)



「ふ、 …ぅ」
繰り返し繰り返されるキスに翻弄されて、目許に涙が浮かぶ。
自分を翻弄する男は、一見真面目で、神経質で、もしかすると禁欲めいて見えるのに、どうしてこうも一瞬でタガが外れてしまうのだろうか。
「… っき、くろき、 も、やめ」
どちらのものとも判らないくらいの唾液がくちびるの端から零れて、シャツの襟を濡らしてしまっている。どれくらいキスし続けていたのかすらも判らない。なのに、自分だけ酷く息が乱れているのはどういうことなんだろう。
確かに黒木も荒くはなってはいるものの、須田ほどではない。
何となく、悔しい。
「おねが…」
頼み込む須田を遮って、再び合わされるくちびる。しかし今回は触れるだけ。
「黒木…」
「 … ない…」
不意に黒木が呟いた。うまく聞き取れず、須田は首を傾げた。

「矢っ張り、どうしても、キスだけじゃ足りないです」

「ちょ、」
目を見開く須田に、獣の目をした黒木が迫る。



「貴方も、足りないでしょう?」
(嗚呼、どうして俺も、こうも一瞬で流されてしまうのだろう!)



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10.最後に一度だけ



「最後に一度だけ、キスするとしたら、きっと貴方を選びます」
真正面から黒木に宣言されて、須田は思わず笑った。



「そうだね、俺もそうするよ」



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*黒×須 キス10編から後半戦5題です。

ハッチャケ過ぎた感が否めない。
正直楽しすぎて、自重が吹き飛びました。どんだけキスネタ好きなの、自分…。

こちらから、お借りしました。 …酸性キャンディー

2009.09.15